「今日も王から嫌味言われた……」
きの子は肩を落としながら歩兵訓練所を出た。王曰く、「高い、のろい、人口枠は食う、格好ばかり派手で使い物にならない」……確かにドッペルゾルドナーという兵種はコストが高い。一人を訓練するのに肉75・金125がかかり、さらに人口枠2という人口コストが重くのしかかる。さらに速度は4.5、以前なら教会で訓練をすることによってなぜか脚が早くなっていたのだが、最近ではあまり効果がなくなった。しかも教会に通う必要があるためか、さらに訓練コストが一割も上がるのである。
しかし斬馬刀を振り回すドッペルは馬に対する能力は圧倒的である。足が遅いため追いつくことはできないが、きの子としてはカウンター気味に当たれば相手がキュイ子であろうが勝てる自信があった。
「要するに!あたし達をうまく使えない王が悪いのよ!」
「そうは言うけどきの子、我がドイツは機動戦の国よ。スカ美が引き撃ちをして相手が陣形を崩したところに私達が突入、全てを斬り裂くことで勝負が決まるの。相手が来てくれないと戦う事もできないきの子じゃねえ……」
ウラ乃が笑う。彼女の鎧が申し訳程度にしかないというかほとんど痴女じゃねえの、と言いたくなるような格好なのはドイツの軍事予算が少ないからではない。ウラ乃達は最低限の防御の代わりに最高の攻撃力を手に入れたのである。これだけ軽装ならさぞかし脚も速いだろうと思うのだが、なぜか最近は他の国の騎兵より脚が遅いという評価をされていた。
「それでもきの子は追いつけないじゃない。まあ大人しくのろまのファル子達とゆっくり行軍してれば?」
建物は割れない、重装騎兵より脚が遅い、ついでに下手するとスト美にすら撃ち抜かれる分際で……とは思うものの実際の所ドイツの戦い方は速度が命である。相手の準備が整う前に弱いところを突き崩すのが肝要であって、重装歩兵と大砲をがっちり揃えて前を押すという戦い方はあまり得意ではないのだ。
「敵発見!」
農民達が鹿を狩っている平和な風景を伝令の声がかきみだす。
「敵兵力は!?」
「コヨーテ10、マセワルティン9!ピューマ槍兵6も確認されています!」
「こちらの兵力は……」
ドイツの現有戦力は心許ない。ウーランが2体出撃しているものの、そんな戦力ではとうてい太刀打ちできる兵数ではない。街の外れに騎兵の訓練所は出来ているのだがそこから新たな騎兵戦力が出撃するには時間がかかる。しかも騎兵ではピューマ槍兵の相手はできないのだ。
「ど、どうしよう……」
ウラ乃は震えていた。敵はもうすぐやってくる。騎兵2体では間違いなく死ぬ。例え後輩達が5体やってきても結果は同じだろう。死ぬのが多少遅くなるだけだ。
騎兵として死ぬことは覚悟していた。だがここで自分達が死んでも街を守ることはできない。自分達を殺戮した敵兵はそのまま街になだれこんで暴虐の限りを尽くすだろう。報われない死がどうしようもなく近付いてくるのをウラ乃は黙って待ち続けるしかなかった。
「安心しなさい」
その時少女の声が響いた。
「き、きの子?」
「ウラ乃達はとにかくあの石を投げる連中だけなんとかして。後は私達が引き受けるから」
「で、でも」
きの子達ドッペルゾルドナーは3人しかいない。訓練所から来る5体と応援にきている2体、自分達を含めて9体のウーランで確かにマセワルティンは対処できるだろう。だが妙に足の速いかぶり物をつけた歩兵とピューマ槍兵だけで16もいるのだ。
「ふん、あんなもやしなんて3人いれば十分よ」
きの子はニヤッと笑った。後ろの二人も不敵に微笑んでいる。
「この斬馬刀が飾りじゃないってこと、あんたにも教えてあげないとね!」
戦いは終わった。
ウーラン隊は半数を失った。しかし敵はさらに増援部隊を送り込んできたにも関わらずほぼ全滅して引いていった。いまやドイツの兵力は増強され、敵の前線を押し破ろうとしている。
「きの子……」
ウラ乃は小さな土盛りの前にひざまずいていた。あの戦いできの子達はピューマ槍兵を薙ぎ倒し、コヨーテをほとんど斬り捨てていた。残った兵力と増援兵力はウラ乃達で十分に対処できたのである。だが、その代償として三人のドッペルゾルドナーは全滅していた。
「ごめん、きの子」
「姉様は存分に戦われましたわ」
ウラ乃の横にいつのまにか斬馬刀を持った少女が立っていた。
「始めまして、ウラ乃様」
「あなたは」
「きの子の妹ですわ。名前は同じきの子ですけど」
時代進化のおかげか、さらに頑丈そうな鎧を身につけたドッペルゾルドナーがそこにいた。
「さあ参りましょう、ウラ乃様。姉様が守った街を今度は私達が守ります」
「……ええ!」
少女は立ち上がった。あの日より彼女も強くなった。チャプカをかぶる日も近い。そしてサンタ帽をかぶった銃兵達と黒い軍装に身を包んだ竜騎兵達もいる。
「殺りましょう、あの蛮人共を……!」
二人はがっしりと手を取り合って敵を皆殺しにすることをきの子の墓前に誓ったのだった。
HP/230 近接耐性/20% 攻撃力/近接20(範囲2)・攻城60 ボーナス/騎兵x3・馬歩兵x2 速度4.5
なんかsegに影響されてつい書いてしまいましたが、アステカ2Rに対抗するのにドッペル3カードは優秀です。「チュートンの町の中心」カードを切り、馬小屋を建ててウーランを数体生産、さらにドッペル3カードとオマケウーラン2、とどめに民兵まで切ることが出来ればアステカの初弾は間違いなく返すことができるでしょう。あ、オスマンとイロコイは別です。あれはちょっとやばすぎるので場合によっては塔2を出して石弓を切った方がいいかもしれません。ただしカンヤやハサーを出してきた場合はドッペルが刺さるのでうまく活用して下さい。