「そんなに顔をしかめてると皺が増えるよ」
目線の下からハスキーな声が聞こえた。
「え」
見下ろすとそこに粗末な大砲を押している少女がいた。合計5門、だがその大砲は口径こそ大きいものの土台は華奢で砲身も短い。ファル子達に比べると貧弱と言っても過言ではない大砲だ。しかも今はコサね達が突進してきている。大砲の出る幕ではなかった。
「逃げろ!お前のようなものが出てくるところじゃない!」
「ご挨拶だなぁ。大丈夫大丈夫、まあ私達の前に立って壁役でもしといてよ」
そう言いながらその少女達は素早く砲身に弾丸を差し入れた。即座に発射態勢が整ったらしく少女達は突進してくるコサック達に狙いを付ける。
「馬鹿!そんなもので重騎兵が止まるとでも!?」
「いいから見てなって」
「くそっ!」
言い争っている時間はなかった。あと数秒でコサック達と接敵する。敵わぬまでも斬り合って死のう、そう決意してウラ乃は仲間たちと粗末な大砲の前に立ちふさがった。
大砲はあまり騎兵に効果がない。自分達も敵の大砲に突入する際に不思議に思うのだが、歩兵にあれほど絶大な威力を発揮する大砲の弾丸が、自分達重騎兵にはさほど堪えないのだ。まあそういうものなのだ、と思うようにしている。そうでなければスカーミッシャーの弾丸が自分達にほとんど効かないのにマスケットや槍兵、ドッペルゾルドナーに強烈なダメージを与えることも、自分達にとっては天敵の槍がマスケットには柳の木の枝程度の効果しかないことも納得できない。この世界の法則がそうなっているから、と考えるしかなかった。
「覚悟ー!」
ハサねを先頭にコサック達が突っ込んでくる。ハサねは昔からの顔見知りだ。共に轡を並べたことも敵同士だったこともある。何度も倒し倒されした間柄であり、友人とは言えないが知らぬ仲でもない。だがとにかく今は敵だ。
「全員突撃!味方を守れ!」
敵わぬと知りつつも鬨の声を上げ、ウラ乃は馬の腹を蹴った。その時、後ろの粗末な大砲が火を噴いた。
「なっ!?」
ドンドンドンドンドン!
連続して大砲が発射音を響かせる。それはファルコネット砲の重いがいやに長い間隔を置いて響き渡る発射音とは違い、軽快かつ休みなく轟いた。
「うきゃー!」
信じられなかった。コサック達があっという間に数を減らしていく。二十五、六はいたはずのコサックが瞬きする間に十数体になっていた。何が起きたのかわからないがとにかく行くしかない。
「ちょっ、ちょっと待って!なにそれ!なにそれ!」
コサねが慌てて逃げ出す。悪運強いというかなんというか、今の砲撃でも傷1つ負わなかったらしい。その後を追うがじりじりと引き離される。馬の種類の差だろうか、ドイツの馬は他国のそれよりもわずかに足が遅いのだ。
だがコサックの数はすでに十体をきっている。あの変な大砲、スカ美達、サンたん達の射撃で逃げている間も撃たれているからだ。騎兵の突撃に合わせて近寄ってきていたスト美達やドラ子達も慌てて距離を取った。
敵の姿が見えなくなってからウラ乃はその砲兵少女達のところに戻った。
「お前達は何だ?」
「私達は連隊砲よ。重騎兵、重歩兵にすっごく強い砲兵。私は連子」
「変な砲兵だな」
「まあねー。コサックとかマスケットなら私達の敵じゃないよ!でもスカーミッシャーとかドラグーンには全然効かないんだ、私達の弾は。だからそいつらからは守って欲しいな。」
「ああわかった。ドラグーンはともかく、スカーミッシャーの類は任せておけ」
「よし、それじゃ前進しようよ!」
本国から追加のウーラン達がやってくる。さらに後方から巨大な装甲馬車が数体やってくるのが見えた。これならいける、そう思ってウラ乃は敵陣を睨みつけたのだった。
HP/100 遠隔耐性/20% 攻撃/砲撃10(重歩兵x5・馬歩兵x4・重騎兵x5・砲兵x0.5)
重騎兵、重歩兵にボーナスのある砲兵です。射程は20、連続砲撃モードにすると射程が16、さらに基礎攻撃力が4という低いものになりますが、コストが安く(木50金150)数が揃いやすいのでアンチには大ダメージを与えることが可能です。スカミやドラにはボーナスがなく、HPが低いためにあっという間に割られます。また建物にボーナスがないため、建物割りに使うのは無意味です。使いどころの難しい砲兵ですが、相手が重馬重歩の編成の場合は非常に効果的です。以前ドッペルウーラン編成で無理割りしようとしてあっさり全滅したことがあります。