クラン梅組

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ロシアの戦術 軍ユニット(騎兵1)

マス子(3の時代に進化した、という報告はまだない)

どろ沼の戦闘がつづいている。ロシアは相手の前線に寄せては返す波のように何度も攻勢をかけていたのだけれども、決定打を与えられずにいる。

マス子(まずいわ、だんだん押されてきている。敵が私たちの装備が貧弱だっていことに気づいたみたい)

通常のマスケット銃兵の装備であれば、騎兵など怖くはない。ただマス子たちの装備は1世代前の旧式で、打撃力に欠けた。銃士隊の数とマス子の指揮で、通常のマスケット銃兵と変わらない、と見せつけていたが、そのメッキはおそらく剥がれてしまった。さっきから相手の様子が静かだし、おそらく騎兵をそろえて、銃士隊ごとスト美たちを押しつぶす気だ。

マス子(一度、撤退すべき・・・?)
スト美「! ご報告! 斥候役のスト美から相手の騎兵大隊を発見の報あり!」
マス子「数はどれぐらい?」
スト美「約20です」
マス子「斥候役は?」
スト美「死にましたけど・・・?」
マス子「そう」
マス子(銃士隊は残り15、スト美は残り30・・・勝てるかもしれないけれど、前線は維持できなくなるかもしれない)
スト美「ご報告のハサー、私たちの視界に入りました」

スト美がゆびさす、その先には土煙と地響きを伴いながら駆けこんでくるハサーの軍団がある。マス子の判断は早かった。スト美に前線基地まで下がるように命じて、銃士隊は前にでるように指示する。銃剣を装着しながら、相手の軍量を確かめる。

マス子「昨日はケチらずにいいお酒にべきだった?」

マス子は下がっていくスト美たちを見ながら、ぐっと体に力をこめる。スト美たちの訓練のことを思う。彼女たちはトーチカで、人の死を悼まなくなるように教育される、それは機械を調律するような完全さで、ただの農家の娘だったり職人の娘だったりする少女たちは例外もゆるされず、短時間のうちに本名をわすれ、一度に訓練をうける10人単位でスト美という1つの人格を得るのだった。
訓練の事故で仲間が、スト美たちは姉妹とよぶけれど、一人なくなったとしても悲しんだりしない。
ハサーの突撃にマス子は銃士隊とともに銃剣を突きあげて耐える。にぶい光の銃剣は錆びたように壊れやすいうえに切れにくい、命を預けるにしてはあまりに安っぽい。騎手が乗馬の蹄を高くあげさせ、長剣を振り下ろす。マス子は騎手の視線を追いながら、はたして私がここで死んだらスト美は悼んでくれるのだろうか、と思った。

マス子(ここで私が踏んばる意味は?)

ハサーの振りおろした長剣をマス子は銃剣で受けとめ、その銃剣が砕け散るのを見た。


――前線基地。最初は1棟だけであったトーチカは拡充され、2棟になっていた。そのトーチカの背後で馬術訓練所もある。マス子たちが出撃したあとに建設されたのだった。
スト美が戦線から退却してきた。

スト美「ご報告! 私たち30人を残して出撃隊は全滅です!」
教官 「他には?」
スト美「敵の兵種は騎兵が主体です」
教官 「きみらでは荷が重いな」
スト美「そうですか? 私たちでは難しいですか?」
教官 「そうなんだよ。まあ、安心していい。入植地のほうで技術革新があり、3の時代に進化したとの報告があった」
スト美「?」
教官 「きみたちのライフルも最新式に刷新されるし、ひそかに訓練していた騎兵たちも使いものになったということだ」

馬のいななきが聞こえた。スト美がふりかえると、騎乗した女兵士がいる。黒いくせっ毛の女性で、馬にまたがったまま弓をつがえている。

教官 「紹介しよう、タタ子だ」
タタ子「・・・どうも」

スト美たちの一人が、タタ子に反応して身震いした。おそらくスト美になる前の人格に刻まれている本能が、タタ子を恐れたのだ。
タタ子の出自はタタールだ。
長いあいだ、スト美たちルーシを隷属させてきた一族。いまでこそ大公が立ち、タタールの支配から開放されたとはいえ、辺境部では昔と変わらないタタールの横暴がある。

教官 「タタ子にいまから迫ってくるハサーの迎撃の指揮をお願いする」
タタ子「分かった。行くぞ、おまえら」
スト美「はい!」

ハサーが前線基地の前に集結している。
その背後には温存されていた守備隊の姿もある。石弓兵と長槍兵、それなりの数がいた。トーチカから訓練を終えたスト美がでてくる。

スト美「来たよ、私たち」
スト美「よろしくね、新しい私たち」
タタ子「・・・前にでろ」
スト美「はい!」

スト美は行軍を開始する。
植民地の地面はやわらかく、草の匂いがした。祖国では短い夏のあいだにしか感じられない心地よさがある。スト美は行進しながら、そのイメージが、この場所を勝ち取りたいという強い感情が衰えないことに一抹の不安を覚える。

スト美は行軍する。
相手のハサーが突撃してくる。距離があっという間に詰まる、そのあいだに手にしているライフルでハサーを狙い撃つけれど止まる気配はない。隣でライフルをかまえたスト美が、馬に蹴っ飛ばされて地面に転がった。どくどくと赤い血が緑色の草に染みていく。スト美はそれに見とれた、赤と緑のまだらに。

タタ子「そのまま耐えろ」

ハサーはタタ子の姿を見ると笑った。
彼女は、そう、前世紀の格好をしている。蒸気機関が実用化され、銃器が主力になりつつあるこの時代、彼女は中世のまま止まっているのだから。手織りの服、装飾過多の装備。どうして、それが近代化された騎兵に勝てるというのだろうか。彼はまとわりついてくる少女たちを蹴散らして、タタ子に向かって突撃した。

タタ子は向かってくる騎兵を見て、はじめて表情をくずした。
族長から聞いた昔の話、彼女たちが世界を征したことがあった。向かってくる騎兵は、そのお伽話にでてくる馬鹿な白蛮にそっくりだ。重たい鎧をみにつけ、馬に乗り、ただ突撃ばかりを繰り返す。迫ってくる騎兵は鎧を着てはいなかったけれど、だから何だ。弓をつがえ、矢を放った。その動作はあまりに早くて、ハサーは自分の胸に矢が突き刺さって、はじめて攻撃されたのを知った。なにかを思う暇もなくタタ子の第2射が喉に刺さり、彼は絶命した。

混乱はまたたくまに伝染した。
タタ子が率いた弓騎兵の1隊は、次からつぎへと矢を放った。矢は雨のように降りそそぎ、その一撃一撃は決して軽くない。ハサーの軍団は退却しようと転身するのだけれど、スト美たちがまとわりつき、それも叶わず、いつのまにか戦場からハサーの姿は消えていた。

タタ子「前進」
スト美「はい!」

スト美は前進し、後ろで控えていた守備隊を狙撃する。ライフルは新式になっており、いままでよりも一撃が確実に重くなっていた。制服も硬くなり、姉妹たちもすぐには死ななくなった。
スト美は前進し、前進し、射撃し、射撃した。さっき逃げ帰ってきた敵の前線基地がみえてくる。

スト美「!」

彼女の進むさきに死体の山がある。味方の死体。スト美は足をとめ、その死体に目を向けた。らしくない感傷かもしれない、戸惑い、分からなくなり、スト美はとなりを見た。となりの姉妹もスト美に顔を向けていた、目と目とがあい、逡巡を交換する。だけど、長くつづかない。となりのスト美が突然たおれた。その背には矢が刺さっていた。振り返れば、矢をつがえたタタ子がいる。

タタ子「前進」
スト美「はい!」


弓騎兵

HP : 265
射程 : 0-14
攻撃 : 近接7.15 遠距離14.3 攻城8.8
※ 遠隔の攻撃間隔 1.5 / 重騎兵 3倍ダメージのボーナス

ページ作成 2012.10.28 18:03 最終更新 2012.10.28 18:04